凍結・融解
凍結(胚・卵子)
採卵周期に卵が複数個採れた場合や、子宮内膜が薄いなどの理由で移植しない場合には、胚を凍結保存し次周期以降に移植を行います。また、採卵当日に精液の提出ができなかった、または精液中に生存精子が見つからなかった場合や、がん患者さまの妊孕性温存療法として卵子凍結を行う場合があります。
凍結保存は-196℃の液体窒素で保存することにより半永久的に保存が可能とされています。
当院は超急速ガラス化保存法を用いて胚・卵子を凍結処理しています。
胚・卵子をそのまま凍結すると、細胞内の水分が凍って氷晶(氷の結晶ができる現象)となり、胚・卵子は損傷してしまいます。胚・卵子を生存したまま保存するには、専用の凍結液にて胚(卵子)を脱水し、クライオトップと呼ばれるシートの上に少量の凍結保護剤とともに乗せ、液体窒素に直接投入し急速に凍結させます。そうすることで、細胞内の氷晶によるダメージを回避し、凍結保存が可能になります。(図1)
ただし、胚の融解後の生存率が高いとされている超急速ガラス化保存法でも100%の生存率ではなく、融解後に変性してしまう胚もまれにあります。(当院の融解後の生存率は99%です。)
融解(胚・卵子)
採卵周期に凍結した胚・卵子は次周期以降に融解し、移植または媒精を行います。
凍結した胚を37℃に温めた融解液に投入して急速に融解します。その後、凍結時に使用した凍結保護剤を段階的に除去し、凍結前の状態に戻します。
融解後は培養器(インキュベーター)内で数時間回復培養してから移植、または媒精を行います。
孵化補助
(AHA:Assisted Hatching)
胚が着床する際、透明帯と呼ばれる胚を取り囲む殻を破り、孵化した状態で子宮内膜に着床します。
孵化補助は胚が透明帯から脱出するのを補助する方法です。
凍結により透明帯が硬化し、孵化しにくくなっていると考えられており、当院では凍結時に胚盤胞だった胚には孵化補助を勧めています。
孵化補助には様々な方法がありますが、当院ではレーザーを用いて透明帯の一部を切開します。
孵化補助を行うことで胚は孵化することができ、着床率の上昇が期待できます。
凍結(精子)
提出した精液中の精子が少なく媒精出来ない事態を回避するため、または、がん患者さまの治療前の妊孕性温存療法として精子を凍結保存しておくことが可能です。
精子は凍結・融解すると凍結前の所見に比べ運動率が低下します。そのため、当院では凍結精子を使用する場合の媒精方法は顕微授精とさせていただきます。
精子も胚・卵子と同様に精液をそのまま凍結すると氷晶により精子が損傷してしまいます。そのため精子用の凍結液を使用して精子凍結保存を行います。当院では液体窒素蒸気凍結法を用いております。
融解(精子)
凍結してある精子を凍結タンクから取り出し、37℃のお湯に浸けて融解します。融解後に培養液で洗浄して、凍結保護剤を取り除きます。その後、顕微授精に用います。