検査・治療

着床不全検査・不育症検査

ホーム検査・治療着床不全検査・不育症検査

反復着床不全とは?
(RIF:reccurent implantation failure)

体外受精において、良好な受精卵(胚)を複数回移植しても妊娠が成立しない状態を「反復着床不全」と呼びます。 様々な基準が提唱されていますが、「40歳未満の方が良好な胚を少なくとも4個以上、最低3回以上の周期で移植したにもかかわらず着床しない場合」とするのが一般的です。 妊娠するためには「受精卵の質」だけでなく、「子宮側の因子」と「受精卵を受け入れる体側の因子」、その3つの因子が全てそろう必要があります。

図:3つの因子が全てそろう必要がある

反復着床不全の原因とその検査法

反復着床不全の
原因
検査法
子宮環境の異常

(慢性子宮内膜炎・子宮内膜ポリープ子宮腔内癒着・帝王切開瘢痕症候群・子宮筋腫・子宮奇形・卵管水腫)

子宮鏡、子宮内膜組織検査、
子宮内細菌培養検査、
マイコプラズマ・ウレアプラズマ核酸同定検査、
子宮内フローラ検査、
EMMA/ALICE検査、
MRI、卵管造影検査
免疫学的異常
ビタミンD(25OHVitD)
Th1/Th2比
内分泌疾患
甲状腺検査、糖尿病検査
血栓素因
凝固検査
着床ウィンドウ
(窓)のずれ
ERA検査(子宮内膜受能検査)
受精卵の染色体異常
夫婦の染色体検査
着床前遺伝子診断(PGT-A/SR)

子宮鏡検査

直径3㎜の細いカメラを子宮の中に挿入して、子宮内部を直接観察します。生理食塩水を子宮の中に充満させて行うため多少の痛みを感じますが、外来にて行うことができる検査です。検査時間は5〜15分程度です。検査にて子宮腫瘤(子宮内膜ポリープ・粘膜下子宮筋腫)、子宮腔内癒着、子宮奇形、慢性子宮内膜炎などの有無や状態を調べます。

子宮内膜ポリープ

Photo:子宮内膜ポリープ1
Photo:子宮内膜ポリープ2

慢性子宮内膜炎

Photo:慢性子宮内膜炎1

炎症が進行すると、子宮内膜全体が発赤し(充血)、その中に小さな白い点が多数見えます。イチゴの表面に似ているため、strawberry aspectと呼ばれます。

Photo:慢性子宮内膜炎2

マイクロポリープ(直径1~2㎜の小さなポリープ)が局所的に集中して存在する像も慢性子宮内膜炎の典型的所見です。

子宮内膜組織検査
 (慢性子宮内膜炎検査)

子宮内膜組織を採取し、慢性子宮内膜炎の有無を調べる検査です。組織を特殊染色し、形質細胞という細胞を確認することで診断します。子宮内膜に細菌による持続的な炎症がある状態を「慢性子宮内膜炎」と言い、着床率が低下し、流産しやすくなります。反復着床不全の患者さまの約30〜60%、原因不明の習慣流産患者さまの約40〜60%に認められるとされます。基本的に無症状で検査をしないと診断できません。抗菌薬内服による治療後は、着床率、妊娠率ともに改善することが報告されています。

直径約3mmの細い管を子宮内に挿入し、組織を採取します。検査時間は数分です。掻把するのではなく、吸引にて組織を採取できるピペットなため、痛みは少なく外来にて行うことができる検査です。

子宮内細菌培養検査
マイコプラズマ・ウレアプラズマPCR

慢性子宮内膜炎の原因菌を同定する検査です。原因菌が特定できれば、治療効果のある抗菌薬を選択します。子宮内膜組織検査と同時に施行しています。

子宮内フローラ検査
EMMA・ALICE検査

EMMA:
Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis
ALICE:
Analysis of Infectious Chronic Endometritis

子宮内膜を採取し、子宮内の細菌の割合を調べる検査です。次世代シークエンサーという遺伝子解析技術により、前述した子宮内細菌培養検査では検出できない、ごく少量の菌まで検出することができます。

子宮内は細菌叢(子宮内フローラ)があり、乳酸菌(ラクトバチルス菌)の割合が90%以上のグループの方が、90%未満と比較して妊娠率・妊娠継続率・生児出産率ともに有意に高いことが報告されています(下表)。子宮内フローラ検査は子宮内膜炎の原因菌を同定でき、また、ラクトバチルス菌の割合を調べることができます。

検査方法は子宮内膜組織検査と同様です。 病原菌が検出された場合、適切な抗菌薬の内服治療を行います。ラクトバチルス菌の割合が低い場合には、当院ではラクトフェリン内服や乳酸菌膣剤を勧めています。

※子宮内フローラ検査とEMMA/ALICE検査は同様の検査で、検査会社が異なります。
EMMA/ALICE検査はERA検査と同時に行う際に選択しております。

子宮内乳酸菌が多い群
子宮内乳酸菌が少ない群
妊娠率
70.6%
33.3%
妊娠継続率
58.8%
13.3%
生児出産率
58.8%
6.7%

Moreno et al., 2016. Am J Obstet Gynecol. 215:684-703

ERA検査(子宮内膜受容能検査)

ERA:Endometrial Receptivity Analysis

子宮内膜が受精卵を受け入れる時期を「着床の窓」と呼んでおり、この時期に胚移植を行わなければ、良好な受精卵でも子宮に着床できません。反復着床不全患者さまの約25%で、この着床の窓がずれていることが報告されています。

ERA検査とは、着床の窓の時期を特定する検査です。胚移植当日と同じ条件下で、子宮内膜を採取し、遺伝子レベルで受精卵を受け入れ可能な状態(受容期)か、着床の窓がずれている(受容期前または受容期後)かを調べます。検査方法は子宮内膜組織検査と同様で、直径約3mmの細いピペットを使用し、検査時間は数分です。

着床の窓がずれている場合は、下図のように、胚移植の時期または黄体ホルモン剤の投与時間をずらす(遅らせる・早める)ことで、最適な時期での胚移植を行います。

着床の窓が受容期前(Pre-Receptive)

図:Pre-Receptive

着床の窓が受容期後(Post-Receptive)

図:Post-Receptive

不育症検査

不育症は妊娠しても2回以上の流産・死産を繰り返して児が得られない場合、と定義されています。初期流産の原因の約70〜80%は胎児の染色体異常であり、女性の年齢が上昇すると流産回数は増加することが分かっています。不育症の原因として胎児染色体異常、抗リン脂質抗体症候群、子宮形態異常、夫婦どちらかの染色体異常、内分泌異常、血栓性素因などがあります。当院では患者さまの状態や経過に合わせて、下記の検査を選択しています。

内分泌検査
甲状腺機能検査(TSH)・糖尿病検査(HbA1c)
抗リン脂質抗体
抗CLβ2GP1抗体、LAC
抗CLIgG抗体、抗CLIgM抗体
抗PEIgG抗体、抗PEIgM抗体
血栓性素因スクリーニング
第Ⅻ因子活性
プロテインS活性、プロテインC活性
自己抗体
抗核抗体
染色体検査
夫婦染色体Gバンド法
絨毛・胎児染色体検査
PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)
PGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)
子宮形態検査
超音波検査、子宮卵管造影(HSG)、子宮鏡、MRI

※一部の検査は自費診療となります。