診療時間
027-310-7701 お問い合わせ 交通アクセス
初診予約 受診予約
はじめての方へ

反復着床不全 (reccurent implantation failure:RIF) について

 体外受精において、良好な受精卵(胚)を複数回移植しても妊娠が成立しない状態を「反復着床不全 」と呼びます。様々な基準が提唱されていますが、「40歳未満の方が良好な胚を少なくとも4個以上、 最低3回以上の周期で移植したにもかかわらず着床しない場合」とするのが一般的です。
妊娠するためには「受精卵の質」だけでなく、「子宮側の因子」と「受精卵を受け入れる身体側の因子」、その3つの因子が全てそろう必要があります。

下記に反復着床不全の原因とその検査法を示します。

反復着床不全の原因

検査

子宮環境の異常
(慢性子宮内膜炎・子宮内膜ポリープ
子宮腔内癒着・帝王切開瘢痕症候群子宮筋腫
子宮奇形・卵管水腫)
子宮鏡、子宮内膜組織検査
ALICE検査、子宮内細菌培養検査
卵管造影検査
免疫学的異常 ビタミンD(25OHVitD)
子宮内フローラ検査(EMMA検査)
Th1/Th2比
内分泌疾患 甲状腺検査、糖尿病検査
血栓素因 凝固検査
着床ウィンドウ(WOI)のずれ 子宮内膜受容能検査(ERA)
受精卵の染色体異常 夫婦の染色体検査、着床前遺伝子診断

 * 当院では、着床前遺伝子診断、Th1/Th2比検査は行っておりません。

子宮鏡検査

 直径3㎜の細いカメラを子宮の中に挿入して、子宮内部を直接観察します。  生理食塩水を子宮の中に充満させて行うため多少の痛みを感じますが、外来にて行うことができる検査です。検査時間は5~15分程度です。
検査により子宮腫瘤(子宮内膜ポリープ・粘膜下子宮筋腫)の有無、その大きさや位置、子宮腔内癒着の有無などが分かります。 また、典型的な所見を認めれば慢性子宮内膜炎と診断することもあります。

↓ 子宮内膜ポリープ

↓ 慢性子宮内膜炎

充血・strawberry aspect
 炎症が進行すると、イチゴの表面のように
 全体に発赤した子宮内膜の中に小さな白い点が多数見えます

内膜マイクロポリープ
 直径1~2㎜の小さなポリープが局所的に集中して存在します

子宮内膜組織検査

 子宮内膜に炎症が存在すると、着床率が低下し、流産しやすくなります。 子宮内膜に菌による持続的な炎症がある状態を「慢性子宮内膜炎」と呼び、 反復着床不全の患者さまの約30~60%、原因不明の習慣流産患者さまの約40~60%に認められるとされます。 基本的に無症状で検査をしないと診断できません。
 子宮内膜組織を採取し、顕微鏡で「形質細胞」という細胞をある一定数以上認めると、 慢性子宮内膜炎と診断されます。形質細胞内のCD138 とういう物質を特殊染色(免疫染色)することで確認します。
 慢性子宮内膜炎に対しては抗菌薬の内服治療を行い、 内服終了後10日から14日以上経過してから再び子宮内膜組織検査をすることで治癒の有無を確認しています。 内膜炎治癒後は、着床率、妊娠率ともに改善することが報告されています。

子宮内細菌培養検査

 慢性子宮内膜炎の原因菌を同定する検査です。原因菌が培養できれば、抗菌薬感受性検査により治療効果のある抗菌薬がわかる場合があります。
(菌の検出率が低いため、現在当院ではALICE検査をお勧めしております)

EMMA検査(子宮内膜フローラ検査)

Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis

ALICE検査(慢性子宮内膜炎検査)Analysis of infectious Chronic Endometritis

 子宮内は無菌ではなく、細菌叢(子宮内フローラ)があり、中でも乳酸菌であるラクトバチルス菌が大半を占めています。 前述したように子宮内膜炎により妊娠率は低下しますが、善玉菌であるラクトバチルス菌の割合が90%以上存在する群は、 90%未満の群と比較して妊娠率、妊娠継続率および生児出産率ともに有意に高いことも報告されています(下表)。 「EMMA検査」とは子宮内の細菌の割合を調べる検査で、ラクトバチルス菌が90%以上存在するかがわかります。 「ALICE検査」は慢性子宮内膜炎を引き起こす10種類の病原菌の有無とその割合を調べる検査です。 EMMA・ALICE検査は同時に行い、排卵後の黄体期(月経15~25日目頃)に子宮内膜を採取します。
 病原菌が検出された場合、適した抗菌薬の内服治療を行います。ラクトバチルス菌の割合が低い場合には、 当院ではラクトフェリン内服や乳酸菌膣剤を勧めています。「ラクトフェリン」はタンパク質の一種で、 乳酸菌の増殖を促す作用や抗菌作用を持ちます。「乳酸菌膣剤」は膣内に挿入することで、 直接子宮内に乳酸菌が生着することが期待できます。

子宮内乳酸菌が多い群 子宮内乳酸菌が少ない群
妊娠率 70.6% 33.3%
妊娠継続率 58.8% 13.3%
生児出産率 58.8% 6.7%

Moreno et al., 2016. Am J Obstet Gynecol. 215:684-703

ERA検査(子宮内膜受容能検査) endometrial receptivity analysis

 子宮内膜が受精卵を受け入れる時期を「着床の窓:WOI」( window of implantation)と呼んでおり、 この時期に胚移植を行わなければ、良好な受精卵でも子宮に着床できません。 近年、原因不明の反復着床不全患者さまの約25%で、この「着床の窓」がずれていることが報告されています。
 ERA検査とは、子宮内膜の着床に関連する238個の遺伝子発現を調べ、「着床の窓」の時期を特定する検査です。 胚移植当日の子宮内膜が受精卵を受容可能な状態にあるかどうかを遺伝子レベルで調べ、 最適な時期に胚移植(Personalized Embryo Transfer:pET)を行うことを目的としています。 通常の新鮮・凍結胚移植を施行した群の妊娠率(胚移植あたり)約60%に対し、 ERA検査結果に従って凍結胚移植を施行した群では妊娠率が86%に向上したとういう報告があります。 妊娠・出産経験のある患者さまでも、この着床の窓がずれている場合があります。
 ERA検査は条件を満たせばEMMA/ALICE検査と同時に行うことが可能です。

検査結果と治療の流れ

 検査結果で着床の窓がずれていた場合、 胚移植の時期または黄体ホルモン剤の開始時間をずらす(遅らせる・早める)ことで、最適な時期での胚移植を行います。

① 着床の窓が受容期前(Pre-Receptive)

② 着床の窓が受容期後(Post-Receptive)